当院では各アレルギー疾患の対応も行っています
アレルギー疾患【食物アレルギー・アトピー性皮膚炎・気管支喘息・アレルギー性鼻炎(花粉症)】は
一旦発症すると、少し長い付き合いになる場合があります。
可能な予防(原因)対策、適切な診断・治療により、よりよい状態を保てるように、
それぞれのお子さんに合った対応を提案させていただきますので、気軽にご相談ください。
★アレルギー検査、舌下免疫療法等も可能です。
1.アレルギーについて
アレルギーとは
- アレルギーとは、人間の防御機能である『免疫』によってひき起こされる過剰反応です。
感染したウイルスをやっつけるのも『免疫』です。ウイルスをやっつけるのは正しい反応なのですが、例えば牛乳を飲んだ時にそれを異物と認識して、発疹が出たりするのが牛乳アレルギーです。このように牛乳を異物と認識するようになるのは、牛乳をアレルゲン(アレルギーの原因)として体が記憶した場合であり、それを『感作』といいます。
アレルギーの診断について
- 診断のためには、実際の症状が重要です。
最も正しい診断は、特定の物(アレルゲン)への暴露(食べる、吸い込むなど)と症状(発疹、喘息など)の間に、因果関係があることをはっきりさせることです。
つまり、何回か同じ原因で同じような症状が出た場合にはっきりします。
血液検査でわかるのは、ある特定の物に『感作』されているかであり、実際にそれでアレルギー症状が出現するかはわかりません。
感作されていても実際に症状が出ない場合もあるのです。しかしアレルギーの危険性が高い場合は、何度も実際にトライしてみるのは難しいため、検査等も含めて判断します。
逆に考えると、血液検査が陽性だからと言って食べられないというわけではないので、症状も出ないのに血液検査をするべきではなく、しかもそれが陽性だから食べないというのはやりすぎです。
アレルギーマーチ
アレルギー体質の子どもが成長とともに、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎と変化しながら種々のアレルギー疾患を発症していくことです。
ただし、それらのアレルギー疾患は成長とともに症状が軽減していくことも知られています。
そして最近では、そのアレルギーマーチの出発点である乳児期のアトピー性皮膚炎や食物アレルギーを予防することで、その後の進行を予防するという取り組みが注目されています。
アナフィラキシー
アレルギーの症状としては、皮膚症状(発疹、紅斑など)、粘膜症状(目の充血、眼瞼や口唇の浮腫など)、呼吸器症状(咳、喘鳴など)、消化器症状(嘔吐、腹痛、下痢など)、神経症状(頭痛、意識障害など)、循環器症状(血圧低下など)があります。
『アナフィラキシー』とは、複数の臓器にアレルギー症状が起きる重度のアレルギー反応であり、血圧低下や意識障害を伴うとアナフィラキシーショックといい、命の危険も生じます。
アナフィラキシーショックの危険性がある場合は、対策としてエピペンというお薬を常備しておきます。
当クリニックでも処方可能です。
2.食物アレルギー
食物アレルギーとは
最も多いのは即時型であり、摂食後2時間以内に症状が現れます。
症状で最も多いのは皮膚症状であり、発赤・発疹・蕁麻疹などです。
その他呼吸器症状(咳、喘鳴)、消化器症状(嘔吐・腹痛・下痢)、循環器症状(血圧低下)、神経症状(頭痛、ぐったり)があります。
皮膚症状については、食物が直接接触した部分のみの発赤や湿疹はアレルギーではなく、接触性の皮膚炎の可能性もありますので、アレルギーかどうかの判断は難しい場合もあります。
原因
原因としては、鶏卵、牛乳、小麦が三大アレルゲンといわれています。
これらは乳幼児期に多く、学童期以降になると果物、ナッツ類(ピーナッツ・クルミ等)、甲殻類(エビ・カニ)、ソバなどが主な原因となります。
予防
妊娠中や授乳中のお母さんの食事等についてですが、学会からも「食物アレルギーの発症予防のために、妊娠中や授乳中に母親が特定の食物を除去することは、効果が否定されている上に母親の栄養状態に対して有害であり、推奨されない」と提言されています。
お母さんは特別な食事制限をせず、バランスよい食事を心がけましょう。
わかっているリスク因子としては、家族歴、遺伝的素因、出生季節等がありますが、
特に重要なのが【乳児期の皮膚炎(肌荒れ)】です。
『皮膚炎=皮膚のバリア機能が低下している状態』であり、その皮膚からアレルギーの原因となる食物が入りこみ感作される(その食物を異物と認識しアレルギー反応を生じる)と考えられています。
逆に食べることで寛容機構(その食物を異物ではないと認識しアレルギー反応を生じなくする)が働きます。
つまり、特別なリスクがない場合は、生後早期から皮膚の状態を良好に保ち、種々の食物を遅らせることなく摂取することが食物アレルギーの予防となります。
治療
乳児期に発症した食物アレルギーの多くは成長とともに治ることが期待できます。
ほんの少しの摂取でも強いアレルギー症状が出る場合は、しばらくその食物を除去することになりますが、程度によっては単に成長を待つのではなく、アレルギー症状が出ない程度の摂食を続けることがより早期の改善につながる場合があります。予防と同じように寛容機構を使って治す方法です。
ただし、アレルギー症状が出る可能性がありますので、食べてよいのか、食べるとしてどのような量なのか等は病院での確認が必要です。
当クリニックでも食物チャレンジは可能です(アナフィラキシーショックを起こしたことがない場合)。
3.アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは
「増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患で、患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義されています。
アトピー素因というのは、アレルギー体質という言葉がわかりやすいかもしれませんが、現在では『アトピー性皮膚炎』の病態は、皮膚の保湿因子が先天性または後天性に減少することによってバリア機能が低下し、種々の刺激(唾液・汗・摩擦・日焼け等)で皮膚炎(湿疹・発赤)が生じるという考え方が中心となっています。
つまり特別なアレルギーがなくても、皮膚炎をおこしやすい状態であり、長期に皮膚炎を繰り返す場合は「アトピー性皮膚炎」といわれます。
アトピー性皮膚炎であるかそうでないかの診断は重要ではなく、皮膚炎としての対応は同じということになります。
原因
バリア機能が低下した皮膚への刺激で皮膚炎(湿疹)が生じます。特に乳児の皮膚はバリア機能が未熟なため、汗・唾液・衣服との摩擦など日常生活での軽微な刺激で皮膚炎が起こりやすい状態です。
予防
アトピー性皮膚炎の根幹であるバリア機能の低下とそれによるアレルギー感作の流れを防ぐのが目的となります。
生まれてすぐからの適切なスキンケアが重要です。
スキンケアは清潔と保湿であり、アレルゲン・汗・汚れ・菌などを除去し、保湿でバリア機能を維持します。
よりよい清潔としては、泡石鹸で汚れ等をしっかり浮かして、ガーゼでごしごしこすったりせずに優しく手で洗い、シャワー等でしっかり洗い流します。
入浴後早めに保湿剤を顔も含めた全身にしっかりぬります(すりこむのではなくしっとりのせる感じで)。
保湿は1日2回するのがよいでしょう。関節や皺の部分もしっかりスキンケアしましょう。
治療
治療も予防と同様のスキンケアが基本になりますが、炎症を生じた場合は清潔と保湿だけでは改善はしにくく、炎症を抑える薬剤(ステロイド)が必要となります。
炎症をしっかり抑えてバリア機能を維持することが、食物アレルギーなどのさらなるアレルギー疾患への進行を予防することにもつながる可能性があります。
すべすべのいい状態をキープするのが望ましいため、最近では乾燥や湿疹がひどくなったらステロイドを塗るという方法ではなく、湿疹が出現しないようにステロイド等の抗炎症剤を使用するプロアクティブ療法が推奨されています。
週に数回定期的にステロイド軟膏を塗布する方法です。例えばステロイド軟膏をやめると4日後ぐらいに湿疹ができるということを繰り返す場合には、湿疹が出る前の3日おきにステロイド軟膏を塗っていい状態を維持するというものです。
当然保湿剤はいい状態の部分にも毎日塗ります。
数年以上の長期にステロイドを使用する場合には、炎症を抑える効果は少し下がりますが、免疫を抑えて皮膚の炎症・かゆみを抑える効果のある薬剤の併用も検討していきます。
適切な治療によって皮膚のよい状態が維持できれば、次第に薬物療法が不要になることも期待できますので、よりよいスキンケアと対応を一緒に考えていきましょう。
4.喘息
喘息とは
気道の慢性炎症と、気道過敏性により、種々の誘因で気管支が細くなって喘鳴等の気道症状をきたします。
反復する発作性の喘鳴や呼吸困難を認め、喘息薬による効果がある場合に喘息と診断できるのが一般的です。
なんらかのアレルギーがあるかの確認は必須ではありません。
原因
喘息発症の危険因子としては、家族歴・アレルギー素因、アレルゲン(ハウスダスト・ダニ・ペットなど)・感染症(ウイルスなど)、環境因子(受動喫煙・PM2.5など)、気象・運動などがあります。
予防
アレルギーマーチとしての喘息予防としては、乳児期早期からのスキンケアで予防できる可能性があります。
また、家庭内での喫煙も避けるべきでしょう。
治療
喘息の発作を起きにくくするためには、感染症・誘因をできるだけ除去するのはもちろんですが、ベースの気道の慢性炎症を抑制することが重要となります。
重症度によって調整が必要ですが、内服薬(ロイコトリエン受容体拮抗薬:LTRA)や、吸入ステロイド(ステロイド:ICS)を定期的に使用した治療を行います。
適切な定期治療を行わず喘息発作を繰り返し、慢性的な炎症が持続した状態でいると、気道リモデリング(非可逆的な気道の変化であり、気道狭窄が戻らない状態で固定してしまう)を生じる場合もあります。
5.アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎とは
アレルギー性鼻炎は、鼻粘膜のアレルギー疾患で、くしゃみ・水溶性鼻漏・鼻閉を3主徴とします。
最近では発症の低年齢化も指摘されています。
大規模調査による結果では、2019年の通年性アレルギー鼻炎(ダニアレルギー)は4歳までで5.1%、5~9歳で20.9%、10~19歳で38.5%、それ以降徐々に低下傾向となります。
スギ花粉症は4歳までで3.8%、5~9歳で30.1%、10~19歳で49.5%、それ以降50歳代まで横ばいです。
原因
症状のある時期と、血液検査(ダニや花粉の特異的IgE抗体を測定)の結果とで判断します。通年性アレルギー性鼻炎の原因はダニ・ハウスダストであり、季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)にはスギ・ヒノキ・カモガヤ・ブタクサなどがあります。その他ペットが原因となることもあります。
★指先からの少量の採血で、20分で結果がわかる検査も可能です(ダニ・スギ・ヒノキ・カモガヤ・ブタクサ・イヌ・ネコ・ゴキブリのアレルギーがわかります。
原則6歳以上で大人の方も可能です)。
予防
アレルギー性鼻炎で原因が判明している場合は、その原因除去・回避が重要となります。ダニの場合は、掃除機掛けを念入りにする、布張りのソファーやカーペットをやめる、ベッドのマット等に防ダニシーツを使用する、ふとんを週に2回は干すもしくは布団乾燥機を使うなどです。花粉については、その時期の外出時対策、布団や洗濯物の外干しを避けるなどです。
治療
抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、鼻噴霧用ステロイド薬を、症状の強さや症状(鼻閉メインか鼻漏メインかなど)で適したものを使用します。
もう一つアレルゲン免疫療法があります。
原因であるアレルゲンを日々投与することで、アレルゲンの暴露により引き起こされる症状を緩和する治療であり、症状を抑えるために必要時に薬を使用するのではなく、薬を飲まなくても症状が出なくなる根本的な治療となります。
治療を3年以上継続することで、治療中止後も数年間は効果が持続するものですが、効果には個人差があります。自宅でも可能な舌下免疫療法は5歳から可能です。
当クリニックで、スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎の治療法である『アレルゲン舌下免疫療法』が可能です。
【スギ花粉症についてはスギ花粉飛散時期以外の開始が望ましく、6~12月中のみ開始可能です。適応は5歳以上です。】
以前から実施されてきた「皮下(注射)免疫療法」と異なり、近年では治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」が登場し、自宅で服用できるようになりました。「舌下免疫療法」は、スギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎と確定診断された患者さんが治療を受けることができます。
鼻炎等のアレルギー症状が強く、生活に支障がある場合で、原因がわかっていても「スギ花粉」や「ダニ(ハウスダスト)」を完全に除去するのは困難です。『舌下免疫療法』は、それらのアレルギー症状を治したり、長期にわたり症状をおさえたりする効果が期待できます。
方法としては、毎日 数年間にわたり継続して服用します。(3~5年間の治療継続が推奨されており、その場合7~8年間効果が持続するといわれています)
くしゃみ、鼻水、鼻づまりの改善 涙目、目のかゆみの改善、アレルギー治療薬の減量、 QOL(生活の質)の改善が期待でき、それらの効果は治療開始後数か月から認められます。
☆2019年の報告では、スギ花粉症の有病率は、5~9歳で約30%(20年で4倍)、10歳台で49.5% (20年で2.5倍)となっており、生活に支障があるようでしたら、ご相談ください。
★お父さんやお母さんも同時に治療可能ですので、鼻炎等でお困りの場合は一緒にご検討ください。
詳細情報は下記リンクをご参照ください。