発達外来について~どんなことをするのか

気になる行動、〇〇ができない等のご相談において、まず確認させていただくのが、【気になる行動やできないことの種々の場面での具体的な内容や状況】です。家での様子はもちろんですが、集団生活(保育園や学校)での様子の確認がより重要となります。ご家族が直接目にできない部分もあると思いますので、担当の先生などからの情報も必要です。また、その原因やよりよい対応の検討のためにも、具体的な前後の情報も必要です。ここに最も時間がかかりますし、その情報が不十分であれば診察室のみでの判断は難しくなります。ましてや、それらが確実にわかるような便利な検査はありません(いわゆる発達検査は知的レベルを計測するものであり、検査中の様子で特性を推察することもありますが、結果として出るのは知能指数となります。特性を確認するようなご家族への質問項目はありますが、受診されるようなお子さんではほぼ当てはまってしまい、それでは判断できないことが多いです)。当院では小児専門の心理師が検査することで、検査の様子から知能指数以外の部分の把握にも努め、医師と話し合って対応を検討しますので、必要時は発達検査を行います。

 次に、【その気になる行動やできないことが、気にすべきことなのかどうか】の判断をします。受診されるご家族は当然心配して受診されているわけですが、ご家族の理想像がお子さんに合っていないことによる場合もあります(最低限のこともできないという場合の、その「最低限」の基準さえ、正しい基準は共通ではないでしょう)。自分の子供の頃はこうではなかった、上の子はできたという比較はすべきではありません。気にすべきことである場合は、その原因について検討し、なんらかの特性や疾患によるものであれば、それに合った対応を考えます

その対応の第一歩は、【特性を理解し受容する】ことから始まります。気が散りやすい、衝動性が強い、コミュニケーションが苦手というような『特性』は程度は様々ですが誰にでもあり、なくなることはありませんが、成長によりその『特性』が気にならなくなります。その特性を理解し、特性を修正しようとするのではなく、その子に合った【環境調整】や必要であれば【療育】を行うことで、特性による支障がないような成長を目指すことになります。目標を持つのは大事ですが、その子が到達できる内容の目標を、到達できる時期に設定することになります。年齢に合った、親の希望通りの目標を短期間に設定することは、子どもだけではなく、親自身のストレスにもなり、叱ってしまう機会が増えてしまうかもしれませんし、子どもの自尊心の形成も損なわれます。子どもに、「できた」「ほめられた」「自分はできる」「頑張ればいいことがある」「できなくても頑張りを認めてもらえる」と思わせることが大事で、それにより子どものやる気や自信が向上することを目指します。〇〇ができること、特性がなくなること、みんなと同じになることを目指すのではなく、子どもの自尊心をそこなわず、自立した生活が送れる大人を目指します。《できないことやよくない行動を注意するのではなく、できたことやよい行動を褒めましょう》

『環境調整』とは、その子の特性を変えようとするのではなく、周りの対応を変えることで、その特性による支障が出ないようにすることです。例えば、気が散りやすいのであれば、気が散ることを叱るのではなく、気が散る原因がない環境を作る、集中して行う時間設定を短くし徐々に増やしていく、少しでも集中できれば褒めるなどです。つまり、これまでの対応でうまくいっている部分は継続しますが、うまくいかない部分もあって相談に来られている方がほとんどですので、周囲の大人の考え方や対応の変化も必要な場合があります。この環境調整の方法の説明が最も重要な対応と考えています。

 より手厚いサポートでそれらの対応をするためには、保育園での加配、学校での支援学級所属も一つの手段となる場合もあります。当院では、それぞれのご家庭に合った対応を一緒に考えていければと思っておりますが、具体的な場面の確認は診察室ではできないことも多く、デイサービス等の『療育』でその部分の把握やより良い対応の理解が深まるかもしれません。療育には、集団生活への対応のための少人数での同年代の子との関わりの練習や、種々の場面でのより良い行動を学ぶソーシャルスキルトレーニングなどがあります。必要であれば療育に必要な書類作成もさせていただきます。

【薬物療法】は、環境調整や療育でうまくいかない場合に、特性によっては効果の期待できるものもあります。ただし、薬物療法のみで解決することはなく、よりよい対応による成長で薬は不要となっていくことを目指します。

色んなお悩みがあると思いますので、ここに書いたような流れにならない場合もあると思います。ご家族のご期待にすぐには応えられないかもしれません。それでも、それぞれのお子さんとご家族にあった対応ができればと思いますので、お子さんの成長を信じて一緒に頑張っていきましょう。